赤木孝一氏 監査役インタビュー

サーバントリーダーとしての監査役を目指したい

株式会社i-plug
常勤監査役 赤木孝一 氏

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サーバントリーダーとしての
監査役を目指したい

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常勤監査役 赤木孝一 氏

サーバントリーダーとしての監査役を目指したい

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常勤監査役 赤木孝一 氏

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株式会社i-plug
常勤監査役 赤木孝一
大阪府出身・在住
神戸商船大学 航海学科(現 神戸大学 海事科学部)卒業
キャリアサマリー
1989年 株式会社そごう 入社
1994年 鹿児島金属株式会社 入社
1995年 株式会社エイブル 入社
2000年 クリエイションカード情報システム株式会社(現 株式会社コナミアミューズメント) 入社
2003年 ヴィンキュラム ジャパン株式会社(現 株式会社ヴィンクス) 入社
2006年 株式会社オートスクエアー 入社
2007年 A.I.キャピタル株式会社 入社
2009年 インタープロテイン株式会社 入社
    株式会社フジ医療器 入社
2014年 株式会社エムケイシステム 入社
2015年 リーガル不動産株式会社 入社
2016年 株式会社i-plug 入社

監査役に就任したきっかけ

株式会社i-plugには、もともとIPO準備の推進役として入社しました。

当時は創業5年を迎え、これから本格的にIPO準備を進めていくぞというフェーズでしたので、内部管理体制は未整備な状態。一から体制づくりをしていかなければならい状況の中、経営企画室に身を置いて、規程整備から、人事制度の構築、販売業務フローの整備、取締役会運営体制構築、中期経営計画策定など、一つづつ体制整備を進めていき、ある程度体制整備が進んで、これから運用フェーズという段階で内部監査室に異動しました。

内部監査への異動は、整備した内部管理体制を運用面から状況チェックすることで、更に強固なものとすることが目的です。

その後IPO準備が進んでいく中で、当時の常勤監査役が高齢のため、任期満了により退任するということになり、後任を探すもののなかなか適任者がいないということから、IPO準備の推進役を若手に委ね、私がその後任を引き受けることになり、2018年10月に常勤監査役に就任いたしました。

監査役としての経験

現時点(2021年10月)で、株式会社i-plugの常勤監査役に就任して4年目を迎えます。

この4年間では、監査役会や三様監査協議会の立ち上げ、上場企業として耐えうる監査役監査制度の確立、東証の上場審査対応を経験しました。

ちなみに、以前在籍していた上場企業の子会社の非常勤監査役に1年ほど就任していた経験がありますので、こちらの経験を加えると監査役としての経験年数は5年という事になります。

今までのキャリアパスと監査役業務との関係性

私のキャリアは、新卒で入社した百貨店の人事が起点となっています。
就職活動にあたっては、出身校が神戸商船大学ということもあって、船会社以外への就職先へは大学で培った気力と体力しかウリがなかったため、外商を希望していたのですが、いざ配属先が発表されると、人事部ということで予想もしなかった部門への配属が言い渡され頭が真っ白になったことを記憶しています。

ただ、何のご縁か、人事という仕事を進めていくうちに興味関心が高まり、専門性を追求したくなって社労士の資格を27歳の時に取得してから、より専門性の幅と深さを追求するには多様な経験が必要と思い、その後転職し、数社において、様々な経験をすることで、人事の専門性の幅と深さを培うととともに、周辺領域である総務や経理業務の経験も培っていきます。

そんな経験を深める中で、出会ったのがIPO準備という仕事。

今までの経験を活かし、人事の専門性以外に軸となるキャリアを構築したいと思っていた当時の私は、専門学校に通ってIPOに関する知識とスキルを学び、その後数社の企業でIPO準備業務に携わり、株式会社i-plugを除き、4社の株式上場を経験、うち2社は自ら株式上場を実現することができました。

以上の経験から、IPO準備業務に携わる中で、管理部門全体にわたる業務遂行経験や知識の習得が、現在の監査役業務を遂行するにあたって、大きな土台となっています。

また、監査という業務の知識・スキル面では、まず、公認内部監査人(CIA)の資格取得と内部監査業務経験によって得た監査スキル、監査役会事務局の経験から培った監査役会運営に関する法的知識やノウハウ、また中小企業診断士資格取得により培った企業診断経験と診断スキルが役に立っています。

そして、人材開発に役立てるために取得した、産業カウンセラーやキャリアコンサルタントで培った傾聴スキルは、監査におけるヒアリングにおいて、大きく貢献していると思っています。

初めて監査役に就任した時に取り組んだこと

上記で述べたような経験・スキルを有しているものの、過去に経験した非常勤監査役とは違い、常勤監査役という立場の重責は就任して始めて感じることとなりました。

そんなことから、一旦、過去の経験や知識は横において、初心に戻ってもう一度、監査役として必要となる知識やスキルを学び直すことにしました。

まずは、監査役に関係する書籍を読みまくりました。特に監査役としての心構えやスキル面に関して以下の書籍が役に立ちました。
・監査役とは何か(西山芳貴 著 同文館出版)
・「良心」から企業統治を考える(田中一弘 著 東洋経済新報社)
・監査マネジメント技法(戸村智憲 著 中央経済社)

次に、毎月開講される日本監査役協会の研修に参加するとともに、実務部会にも加入し、他社の先輩監査役の経験談を聞いたり、意見交換しながら、常勤監査役としてのあり様を学びました。

なお、黒坂さんが主催しているベンチャー監査役の会への参加は、IPOを目指すベンチャー企業の監査役が集まっていることから、日本監査役協会の会合では得られない、IPO準備を進める上で参考になる情報を得ることができ、IPO準備を進める企業の監査役として大いに役立つものがありました。

監査役という仕事に関連して深く悩んだこと、それをどのように乗り越えたか

ベンチャー企業においては、監査役という役割の本質的な理解が進んでいないことが多く、監査役としての立ち振る舞いや意見具申が取締役や経営幹部に理解されないことがあり、うまくその意図が伝わらない場合があります。

そんな場合は、相手が理解してもらうまで場所を変え、表現を変え、根気よく何度も何度も伝えることで、相手の理解に至った様な気がします。

監査役という仕事のやりがい

監査役としてのやりがいは、取締役会等での意見具申が受け入れられ、その発言の効果により、会社がより良い方向に向かった時にやりがいを感じます。

監査役という仕事は、法的には重大な責任と権限を有しているにも関わらず、一般的なイメージは閑散役とか言われたり、どんな仕事をやっているかわからないと揶揄されることが今でも多々あります。

また、法律上求められている遵法性監査だけに視点をおいた監査をしていると、形式的になりがちで、監査役の存在感も希薄になりがちな様な気がします。

なので、監査役としての存在意義を高めるためには、遵法性監査のみならず、妥当性監査、つまり取締役会の意思決定に少しでも妥当性がない様に感じれば、積極的に発言し意見具申を行うことで、取締役会の意思決定をより妥当なものへと促し、企業がよりよい方向に向かう様に支援するということに意義ややりがいを感じています。

そのためには、監査役も取締役同様、経営センスを磨くため日々努力する必要がある様に思います。これもやりがいですね。

どんな監査役を目指したいか

企業は社会に対してどの様に貢献しているのか? 
環境問題、人権問題をはじめ、現代社会は世界レベルで企業に対して、その様な存在価値を問う時代にやってきています。
法律は守るのは当然のこと、それ以上に企業活動には倫理観を求められる時代…
そんな観点から、取締役の意思決定を尊重し、見守り、時には気づきを促す「サーバントリーダーとしての監査役」を目指していきたいと考えています。

監査役という仕事に初めて就かれた方へのアドバイス

監査役は、遵法性監査、妥当性監査という観点からすると監査対象は経営全般に渡りますので、就任されるまでのキャリア経験が何かしら役に立つのではないかと思います。

あとはその経験を如何に監査役監査に活用していくかということを軸に、足らない知識や経験は日本監査役協会等の研修に積極的に参加し、知識習得に励むことが必要ではないかと思います。

こういった知識習得などの自己研鑽は、監査役在任期間中は、継続して行っていく必要があるとも思います。

また、いろいろな監査役が集まる実務部会や監査役の勉強会(例えば、ベンチャー監査役の会等)に参加し、いろいろな監査役の経験を聞くとともに、気軽に質問したりできる監査役間のネットワークを構築することが大切かなと思います。