吉冨 英幸氏 監査役インタビュー

監査役は、経営者と伴走する意義のある仕事だ

株式会社ネクイノ
常勤監査役 吉冨 英幸 氏

監査役は、経営者と伴走する意義のある仕事だ

株式会社ネクイノ
常勤監査役 吉冨 英幸 氏

株式会社ネクイノ
常勤監査役 吉冨 英幸
出身地:兵庫県芦屋市
学歴:県立芦屋高校→神戸大学経営学部
キャリアサマリー
富士銀行(現みずほ銀行)出身→銀行の取引先である医療機器卸業に転じて、

そこで事業子会社の監査役等を務める→20年12月よりネクイノにジョインし、常勤監査役に就任
インタビュー:23年7月24日(月)
役職名等はインタビュー当時のもの

難しいからこそやりがいがある

銀行卒業後に最初に転籍した会社も含めると、監査役としての職務経験は通算7年弱になりますが、やればやるほど、とても難しい仕事だということがわかってまいりました。でも、だからこそとてもやりがいがある仕事だとも考えるようになりました。

(聞き手)その辺の話から始めさせてください。

監査役、特に常勤監査役は経営トップのパートナーのような役割ですので、トップとの基本的な部分での信頼関係が不可欠であることは言うまでもありません。
とはいえ、監査役の役割としては、社長に忖度することなく、必要とあらば、勇気を奮ってトップに異論を唱えるのも、監査役の大事な役目だと考えております。監査役は、そういう意味で、「社内野党」「世間の声代表」みたいな側面があるのではないでしょうか。こんな話をすると、ちょっと孤独な立場という感じがしますが、監査役の役割職務としてやむを得ないことかなと思っています。取締役会メンバーの中で、「仲良しクラブ」的な「なあなあ」の関係では困るし、かと言って反目したり敵対するようではもっとダメ。先ほども言ったように、トップと基本的な部分での信頼関係があって、「あいつが言うのならば、そうなのかも」「もう1回、よく考えてみようか」と思ってもらえるようでないと、何を言ったところで、ちゃんと聞き入れてもらえないと思います。その辺の「さじ加減」「呼吸」はとても難しいと思いますし、私自身、まだまだうまくやれているとは思いません。

企業経営においては、アクセルとブレーキの踏み分けが重要です。社長以下の業務執行サイドが会社を成長させるためにアクセルを踏むのは当然のこと。一方、監査役は多くの場合は、ブレーキ担当という役回りになります。でも、ブレーキばかり踏むというのも良くないと思います。スタートアップ企業の場合、「創業社長=企業価値」みたいなところがあって、社長がやりたいことを、他社を凌駕するような圧倒的なスピードで実現していかないと、企業として生き残れない。一切のリスクを排除して、「あれもダメ、これもダメ」と言うだけでは、企業としての魅力とか持ち味まで損なわれてしまう。だから、社長をはじめとする業務執行役員の皆さんが議論を尽くして「ゴーサイン」を出したことは、基本的には支持するべきだろうと思っています。でも、「これだけは気をつけてほしい」と思うような点に関しては、敢えて注文をつけさせてもらうこともあるし、老婆心ながら慎重な意見を言わせてもらうこともある。その辺のバランスがすごく難しいのではないかと思います。あと、社長以外の取締役の皆さんが、社長の「イエスマン」になってしまって、社長の意見に対してモノ申せないような会社は危ないと思います。やはり自由闊達に議論を尽くすことが重要だと思います。

監査役が、社長以下の業務執行サイドにいろいろと意見を言うためには、ふだんから社内のさまざまな部門や階層の人たちとの緊密なコミュニケーションを心がけて、現場からのリアルな情報、特に悪い情報がちゃんと監査役の耳に入ってくるようなチャネルを構築しておくことが不可欠だと思います。具体的で生々しい情報をしっかり押さえているからこそ、きちんとモノが言える。そういう意味で、内部監査部門との連携はすごく重要ですね。

このようにあれこれ説明をしていても、監査役の仕事というのは、本当に難しい仕事だなあと思いますし、自分自身としてまだまだだと反省するところが多々あります。でも、だからこそやりがいがあると思っています。


私はもともと銀行員を長年やってきて、その間、いろいろな業務に携わってきました。監査役としての今の仕事は、銀行時代以来、いろいろな経験をさせてもらい、勉強させてもらったことに対する、社会へのご恩返しみたいなところがあると考えておりますし、そうした機会を与えてもらったこと自体、自分は本当に幸せ者だと感謝しております。

<黒坂談>
常勤監査役を探しているベンチャー企業があったら、真っ先に推薦したいのが吉冨さんです。
吉冨さんがおっしゃるように、常勤監査役は決して楽な仕事ではなく、その職務を全うできるのはごく限られた方です。
重責を果たすための地道な努力、真摯な姿勢、緻密な頭脳、強靭な精神力、共感力、そして清廉なお人柄・・・、監査役にはさまざまな資質や能力、センスが求められます。

とにかくご苦労が多く、孤独感もあるポジションで、損得だけ考えたら割に合わないかもしれません。
でも、そういう仕事を「やりがいがある」と言い切れるのが吉冨さんのお力ですね。吉冨さんがその真価を思う存分発揮できる場で活躍されることを、これからも益々心から願っています。

銀行員時代の経験について

常勤監査役を務める人の背景やキャリアはさまざまです。最近は女性監査役も増えてきていますし、会計士や弁護士といった高度な専門性を有する人も多いです。私の場合は、監査役として活動するにあたって、銀行員時代のいろいろな経験がとても役に立っていると思います。

私は、大学卒業後、富士銀行(現・みずほ銀行)に入社し、30余年銀行員として過ごしました。その間、法人営業、営業拠点経営、本部勤務、一般企業への業務出向など、すごく幅広い職務を経験させてもらいました。銀行員時代に担当した取引先には、大企業から中堅中小企業、上場企業から非公開オーナー企業まで、多種多様な規模・業種が含まれます。特に経営不振企業の再建支援とか、問題発生企業に関わるような仕事は、銀行員として普通のキャリアを歩んだ人たちと比べても、かなりいろいろと経験させてもらったと思います。経営再建中のお取引先に業務出向して、お取引先のメンバーと一緒になって経営の立て直しに汗をかいたこともありますし、世間を騒がすような大事件を起こしたお取引先の担当者として、ここではあまり言えないようなさまざまな苦労もしました。

本部のコンプライアンス部門では、社内警察みたいな部門で、不正・服務規律違反事案ばかりを2年ほど担当していたこともあります。刑事事件になって大々的に世間を騒がせることとなった重たい事案にほぼ専従で携わったこともありました。

こうした普通ではなかなか経験できないようないろいろなケーススタディを通じて、たくさん修羅場も潜りましたし、いろいろな意味で腹が座ったというか胆力が身について、大概のことにあまり驚かなくなりました。どんな大問題が起きても、たいていのことは何とかなると思っています。

IPO~最初の会社での挫折、ネクイノでの再挑戦について

(聞き手)これまで常勤監査役として、吉冨さんが働いた企業は、今のネクイノを含めて2社です。しかし、最初の会社では、いろいろな事情が重なり、結果的にIPOを断念し、別の選択をすることとなりました。次に、そのお話をお聞かせください。

常勤監査役としての最初の会社について

銀行員は、多くの人が50歳を過ぎると後輩にポストを譲らないといけないこともあり、関連会社か、お取引先企業に出向・転籍することになります。私の場合は、銀行の斡旋で、某支店の重要取引先で、当時、IPOをめざしていた医療機器卸業の会社に出向・転籍して、その会社の常勤監査役に就任しました。15年9月のことです。
その会社では、当初は、IPOをめざしていたので、社内の管理部門の人たちと協力しながらIPOに向けた体制整備に取り組んでいたのですが、結果的には、いろいろな社内事情もあって、IPOを断念することとなり、同業の別の会社(現プライム市場に上場)に買収される選択をすることとなりました。

IPOを諦めて他社の完全子会社となった後も、事業子会社の監査役として引き続き1期は務めたものの、やはりIPOを諦めた会社の監査役というのは、やれることに限界があり、どうせならば、別の企業で改めてIPOに再チャレンジしてみたいという思いが強くなってきて、密かに転職を意識するようになりました。

転職、そしてネクイノでの常勤監査役就任について

会社の発展において、IPOは単なる通過点の1つであり、ゴールでないことは十分承知していますが、それでもIPOは、世間から一人前の企業として認めてもらえた合格証明書みたいなものではないでしょうか。それに、監査役という職種を選択した以上、1回くらいはIPO達成を見届けたいという思いはありました。

そうこうする中で、某転職エージェントからの紹介で面接を受けることとなったのが、現在の勤務先である株式会社ネクイノ(当時は、ネクストイノベーション株式会社)でした。監査役就任の決め手となったのは、当社の石井社長に対するリスペクト、そして当社の事業内容の社会的意義に大いに共感したことでした。

当社の主力事業は、オンライン診療のプラットホームの運営ですが、私が入社した20年12月当時、オンライン診療はまだまだ世間にはさほど認知されておらず、「それって何なの」「違法じゃないの」とか言われていたような状況でした。わずか3年弱しか経っていないのに、本当に隔世の感があります。そうなった理由の1つとしては、当社がものすごく頑張った成果であることは間違いない事実だと思っています。

当社の「スマルナ」事業のユーザーは女性です。日本には出産可能年齢の女性が全国にだいたい20百万人くらいいる一方で、産婦人科医は全国に1万人あまりしかいません。しかも分娩、手術、不妊治療と専門が細分化されているため、このままではすべての地域に平均した医療を届けることはできません。病院へのアクセスが悪い地域もあるでしょう。

転職の際の面接において、石井社長をはじめとする当社メンバーからいろいろとお話を伺う過程で、オンライン診療はそうした社会課題の有効な解決策として大きな可能性を持っていること、いわば社会インフラとして、何としてでも日本でも普及させなければならないと確信するに至りました。

石井社長は、薬剤師の資格をもち、製薬会社でMRとして勤務した経験も豊富です。日本の医療現場の実態を熟知した上で、日本の医療を「再定義しよう」という高い志を掲げて、真摯な姿勢で当社の事業に取り組んでいることに深く感銘を受けました。「こういう社長と一緒に仕事をしたい」「社長の考える医療の未来を見届けたい」と思ったことが、当社にジョインする上で大きな決め手となりました。

当社にジョインするにあたり、社長からは、「ウチは若いメンバーが多いので、吉冨さんには、当社の重石(おもし)になってもらいたい」「僕らが暴走しそうになったら全力で止めてください」と言われました。単に若くて勢いがあるだけではなくて、バランス感覚も兼ね備えた優れた経営者としての資質を持った人だと直感しました。スタートアップ企業は、先ほども言ったとおり、創業社長の能力が企業価値を決めると言っても過言でなく、社長の優劣ですべてが決まるようなところがあります。この点に関しては、業歴のある老舗企業とは全然違うと思います。私は銀行員として、いろいろな企業の経営者をたくさん見てきたので、優れた経営者とそうじゃない経営者を見分けるのは実は得意なんです。

ネクイノでこれまでにやったことについて

ネクイノには、N-2期半ばからジョインしましたが、IPOを展望しつつ、管理部門、内部監査部門等と連携して、社内のガバナンス体制の構築に取り組むこととなりました。21年8月の株主総会で、非常勤監査役2名にもジョインしていただき、そこから、「監査役会設置会社」として本格稼働するようにもなりました。

私がジョインして3年弱ほどの間に、会社としての社内管理体制が急速に整備されて、「会社らしい会社」になっていくのを見守るのは、とても手応えがある素晴らしい体験でした。当社の管理部門は少数精鋭というか、要所要所にとても優秀な人が揃っていて、業歴の浅いスタートアップ企業としてはあまり他に例がないのではないかと思うくらいに、会社としての「屋台骨」がしっかりとした会社なんです。

内部監査部門とは立ち上げ当初から文字どおり二人三脚でスタートしたので、すごく緊密な連携関係を構築できたと思います。常勤監査役に求められることとして、非常勤監査役と異なる点でもありますが、いろいろな部門や階層の人たちの一次情報にどれだけダイレクトにアクセスできるかがきわめて重要な意味を持ちます。常勤監査役と内部監査部門との連携は、そういう意味でも、とても重要ではないでしょうか。当社の内部監査責任者である磯部さんが社内各部門に往査したり、部門責任者との面談する際にも、できるだけ同席させてもらうようにしておりました。また当社の内部監査手法の特色として、被監査部門に所属する全員、契約社員とかも含めて悉皆でアンケートを配布して、ラインの責任者を介さずに本音ベースの情報を直接収集する仕組みを設けていました。アンケートで気になることを書いているメンバーとは必要に応じて個別面談をすることもありました。ここで得た情報は、社長以外の取締役や執行役員には一切開示せず、社長、監査役、内部監査責任者限りとすることで、社員たちの心理的安全性に配慮しつつ、現場から忖度抜きの生々しい情報を集約するのにとても有効でした。それらの中には、経営陣にとって耳の痛くなるような内容も相当程度含まれていましたが、そうした情報を社長にダイレクトに伝えることは、会社の健全性を維持するためにもとても重要ではないかと思います。

それ以外にやったこととしては、社長をはじめとする取締役や執行役員といった経営幹部の皆さんとの緊密なコミュニケーションにとても気を配りました。特に社長とは四半期毎に監査役会として定例的な打合せを必ず実施して、本音ベースでいろいろな意見交換ができる機会を持っていました。他の取締役とも取締役就任時の他、最低でも1年に1回は定例的な面談を実施するようにしていた他、何か気になるような事項があれば、こまめに面談を実施していました。

他には、監査法人とか主幹事証券との円滑で闊達なコミュニケーションの仲介役みたいな役割を果たすように心がけていました。業務執行部門はともすれば、立場上、監査法人とか主幹事証券と意見が対立することもあるし、あまり余計な詮索をされたくないと考えるような場面もあります。監査役は、もう少しニュートラルな立場に立って、監査法人とか主幹事証券から、外部の専門家としての適切なサポートが得られるように、彼らをうまく活用するという視点が重要ではないかと思っています。そのためには、良い情報だけでなく、悪い情報、会社にとって格好悪い情報も敢えて率直に伝えるようにしていました。

いろいろとご説明しましたが、もちろん私がやったことは、当社全体での取り組みのほんの一部に過ぎませんが、IPOを展望しつつ、皆んなで協力して会社としてのガバナンス体制構築に取り組んだ結果、会社としての体制構築に関しては、概ね完成形に近づいてきていると言っても過言ではないと思います。

正直なところ、当社みたいな創業してまだ7年ほどのスタートアップ企業が、短期間のうちに、ここまで「会社らしい会社」になったというのは、すごいことだと思うし、社長以下の経営陣も含めた努力、幹事証券や監査法人の適切なサポートの賜物だと思っております。

<黒坂談>
IPOは運やタイミングも大切な要素です。
ネクイノ様は関西のベンチャー企業としては非常に有名。新規性があって、勢いがあって、あっという間に関西のトップ5に駆け上がった。それだけに中途半端なIPOはできないというプレッシャーを、石井社長をはじめとする皆さん全員がヒシヒシと感じておられることと思います。

ベンチャー企業の成長過程はコントロール不能な側面があり、吉冨さんも常勤監査役としてご苦労も多いのではないでしょうか。

吉冨さんには監査役として優れた点がたくさんあるのですが、特に社長と本音ベースでのコミュニケーションがきちんととれるところが素晴らしいですね。
業務執行取締役は、社長の部下であった方もおり、どうしても忖度しがちです。一方、必要なときには権限がある人にでも角の立つことを言わなければならないのが、監査役の役回りです。
苦しい立場なのですが、監査役が企業のために進言しても、社長から信頼されリスペクトされていなければ、その言葉は届きません。

その点、吉冨さんは社長から一目置かれていたはずです。それはふだんのお仕事ぶりを社長が評価していたからに他なりませんが、改善策をきちんと示されていたのも大切なポイントですね。
ただ批判するだけでは信頼関係は構築できません。指摘するとともに代替案を示すことができるかどうか。それができるのが吉冨さんの力量です。

それから、もう1つ。
監査役は社内メンバーとの距離感がとても大事です。
いざとなったら忖度なくものを言わなければならない立場ですから、株主、社長、従業員、どのステ―クホルダーともあまりに近すぎてはだめですし、遠すぎては話ができません。

それほどに難しいお役目を「やりがいのある仕事だ」とおっしゃる吉冨さんは、素晴らしいですね。
吉冨さんには、ベンチャー企業の常勤監査役として、今のお仕事が片付いた後も、さらなるご活躍を期待したいものだと思っております。

黒坂さんとの出会い、今思うこと、そして監査役を目指す方に

黒坂さんとの出会いは、20年11月に「ベンチャー監査役の会」に参加したときです。ちょうどネクイノの常勤監査役に就任する直前でした。まだ「監査役候補」という立場でした。

「我々のハブ(HUB)」として

黒坂さんは我々のハブ(HUB)のような存在です。黒坂さんの主催する勉強会に参加するようになって、さまざまなスタートアップ企業の監査役と面識ができ、黒坂さんを介してすごく視野が広がりましたし、先輩監査役の皆さんからいろいろなことを教えてもらったり励ましてもらったりして、本当にありがたく思っています。

それから「ベンチャー監査役の会」のスピンオフ企画として、ネクイノの内部監査責任者の磯部さんが中心になって、「ないかんミートアップ」という内部監査担当者の勉強会を立ち上げたことについても触れておきたいと思います。

内部監査担当者は会社の各部門を、社長に代わってチェックする役割ですので、監査役同様に社内ではあまり相談相手もおらず孤立しがちなポジションです。内部監査部門に大勢のスタッフを擁しているような大企業と異なり、中堅中小企業の場合、IPOをめざすような企業であっても、内部監査部門はだいたい「ワンオペ」で、他社の情報もほとんど入ってきません。そこで、いろいろな会社の内部監査担当者が集まって、励まし合いながら一緒に勉強して、共に成長できるような場があればいいなと思ったのが出発点です。黒坂さんの運営する「ベンチャー監査役の会」が大いにヒントになりました。いわば「ベンチャー監査役の会」の弟分みたいな会です。黒坂さんからも継続的にサポートしていただき、「ベンチャー監査役の会」でも参加者を募ってもらっています。そうした支援体制もあって、「ないかんミートアップ」の方も順調に発展しつつあり、おかげさまで発足して2年半を越えました。

初めて常勤監査役になる方に

私は自分の経験からも、さまざまな経験を積んだセカンドキャリア以降の人に、ぜひとも常勤監査役に就いていただきたいと願っています。

私自身、スタートアップ企業で仕事をするのは、ネクイノが初めてですが、スタートアップ企業の監査役というのは、夢を追いかける若い経営者と伴走する、すごく意義のある仕事だと思っています。私の方からは、これまでのキャリアで培ったいろいろな経験を、若い経営者や社内メンバーたちに提供して、些かなりとも役立ててもらうことができる一方で、若い人たちと一緒に仕事をすることで、私の方は、皆さんから若さや元気をもらっているような気がしております。双方にとって、「ウィン・ウィン」な関係ですよね。

もう1つ、セカンドキャリア以降の人たちに監査役に就いてもらいたい理由としては、監査役には「精神的自立性」「経済的自立性」が求められるのですが、セカンドキャリア以降の人たちは、多くの場合、それらの点が担保されているのではないかと思うからです。子育てや住宅ローンの返済におカネがかかる現役世代だと、自己保身のために、社長の顔色を窺ってしまうこともあるかもしれませんが、そんなことでは、監査役としての役割を十分に果たすことができないような気がします。株主に負託を受けた立場として、いざとなったら、職を賭して、社長にモノ申す覚悟が必要とされるのが、監査役という仕事だと思っています。

私は、23年9月に満62歳を迎えました。もう決して若いとは思っておりません。それでも、23年2月の「大阪マラソン2023」に出場し、無事完走しましたが、自分では体力も気力もまだまだ衰えていないと思っています。したがって、今後とも、チャンスさえあれば、いろいろなスタートアップ企業の成長のために、些かなりともお手伝いをしていきたいと考えております。